2015年1月27日(木曜日)のBS1「ワールドニュース」で、
ジャック・アタリ氏のインタビューを紹介していました。
ジャック・アタリ(1943年11月1日生まれ)
フランスの経済学者、思想家、作家。
アルジェリアの首都アルジェ出身のユダヤ系フランス人。
ジャック・アタリ氏はミッテラン政権の時(1981年)に、
37歳の若さで大統領特別補佐官を勤め、
サルコジ政権(2007年)では諮問委員会の委員長となっています。
過去にもジャック・アタリ氏のNHKによるインタビューがあったようで、
約7年前の2009年5月4日、5日の2日に渡って、
「第1回 危機の核心とは何か」、
「第2回 世界を襲う5つの波」を放映しています。
この「世界を襲う5つの波」を簡単に紹介して、
本題の今回のインタビューへ進みます。
★1.第1の波 “アメリカ支配の崩壊”(~2020年)
★2.第2の波 “多極型秩序”(2020年~2040年)
★3.第3の波 “超帝国”(2040年~2050年)
★4.第4の波 “超紛争”(2050年~2060年)
★5.第5の波 :”超民主主義”(2060年~)
★1.第1の波
アメリカは自国のインフラ整備や借金返済のため、
世界から自国へ目線を移らざるを得なくなる。
★2.第2の波
今までの一極集中(例えばG7)から多極化(例えばG20)が世界を支配するようになるが、
多国籍企業の圧力から自国を守ることで精いっぱいになる。
★3.第3の波
多国籍企業が帝国という存在となり、
教育や警察、軍なども民営化される。
シオン賢者の議定書の第十三の議定書に書かれているように、
エンターティナー(お笑い)やスポーツ(サッカー)、
レジャー(ディズニーランド)が盛んとなり、
今と同じように諸問題から庶民の目がそらされ、
格差が拡大する。
★4.第4の波
エネルギーや水の不足により紛争となるが、
市場経済(多国籍企業)が支配していることから、
調停などのコントロールが効かないため、
ここで大規模な紛争(核による第三次世界大戦か)へと発展する。
★5.第5の波
戦争の悲惨さによって地球人類が目覚めることとなり、
ここで唯一「幸せな波」が到来する。
この幸せな波である「超民主主義」とは、
「自由」で「他者への尊敬」を持ち、
「他者を幸せにすることで満足感を得る」
という人たちであふれかえる世界とのこと。
過剰な欲求よりもギブ・アンド・ギブの精神で、
千葉県南部(鴨川市、館山市、南房総市、鋸南町など)の「安房マネー」や、
岡山県津山市阿波の「こもれび券」などの地域通貨ように、
民間銀行群が発行する「紙幣」ではなく、
「物々交換」のような緩やかな経済体系になっていくということです。
と、やっと今回の番組紹介です、どうぞ。
紛争やテロで大規模な難民問題に直面するヨーロッパが、
今後どうなるのかについて、
西洋文明の批評家としても知られる経済学者、
ジャック・アタリ氏へのインタビューをご覧いただきます。
ではまず、アタリ氏のプロフィールからです。
ジャック・アタリ氏はアルジェリア出身のフランス人経済学者です。
ミッテラン政権の時に37歳の若さで大統領特別補佐官を務め、
ベルリンの壁崩壊後は、東ヨーロッパ復興のために創設された、
ヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁に就任しました。またサルコジ政権では諮問委員会の委員長として、
政策提言を行う一方、
創設したNGOで「マイクロクレジット」と呼ばれる、
貧しい人への少額融資を行うなど、
今も作家活動とともに、多方面で活躍しています。
今回アタリ氏にインタビューしました、ヨーロッパ総局の今村啓一総局長と中継がつながっています。
今村さんおはようございます。
おはようございます。
あのーアタリ氏はですね、
まずこのヨーロッパを揺るがしています、
難民問題の行方、どういうふうに見ていたんでしょうか。
はい、アタリ氏はEU設立の影の立役者とも言われ、
歴史観を踏まえて将来を見通す発言は、
今も世界中から注目を集めています。そのアタリ氏、ヨーロッパを揺るがしている難民問題について、
今後も各国は受け入れ続けることが可能だと見ています。
難民の問題を考える際には、正確な分析が必要です。
難民の受け入れ数は100万人~150万人と言われていて、
ヨーロッパ全体の人口と比較すると、
100万人はわずか0.2%、150万人だとしても0.3%で、
取るに足らない数字です。難民の数はヨーロッパ全体の人口のわずか0.3%なのです。
そのうえでアタリ氏は国境を超えた大規模な人口移動を当然のこととして、
受け入れなければならない時代に入りつつあると見ています。
いまヨーロッパには大勢の難民が流入していますが、
なにも人類史上初めてではありません。18世紀や19世紀にもヨーロッパからアメリカに大勢が渡ったのです。
今後はこうした動きを当然のことと考える必要があります。
行動の自由なくして、「真の自由」、「真の民主主義」はないのです。
人類が(難民だけではない)流浪の民となる事実を受け入れることです。そして人々の受け入れ態勢をどのように整えるかについては、
日本やヨーロッパなど受け入れ国にかかっています。
難民に寛容なアタリ氏の姿勢が垣間見られる内容だったと思いますけど、
ただその一方で、雇用の問題ですとか文化的摩擦の問題ですとか、
受入に向けました、その現実的なハードルが高いんじゃないでしょうか。
もちろんアタリ氏も難民がヨーロッパに入ってくるスピードには、
配慮すべきだとしています。ただ、世界的な人口の移動は、もはや止めることはできず、
それをスムーズに受け入れる道筋を各国が考えるべきだとしています。
特に移民の流入を活力に経済成長を続けるアメリカの例を挙げながら、
教育や職業訓練を通じて、移民が自ら職を見つけたり、
作り出したりできる、その環境を整えることが重要で、
それは時間をかければ可能だと主張しています。長期的なビジョンを持って取り組めば、
受け入れ国にとっても、必ず利益になるとアタリ氏は見ています。
さらにアタリ氏はユーロの将来に自信を示したうえで、
ヨーロッパは通貨統合を基に、
今後20年で政治の統合に向けて進むと予測しています。
ユーロ(€)の人気は衰えていますが、
むしろユーロ圏に入りたい国は増えるばかりです。ユーロ(€)には楽観しています。
長期的に見て、例えば今から20年後、
もしヨーロッパの政治統合が進んでいなければ、
ユーロは生き残ることはできないでしょう。
ヨーロッパ中央銀行だけでは不十分で、
政治的な統合が必要です。我々はいずれ連邦国家に向かいます。ヨーロッパは大変強く、世界で最も裕福な大陸で、
世界で最も住みやすい場所です。
平均寿命も世界一長く、社会保障も整っていて、
誰もがヨーロッパに行きたいと思っています。
しかし、その状態を保つには常に警戒心が必要です。
組織や指導者層の在り方、そしてEU統合と民主主義、
社会福祉などを継続的に改善しなければなりません。
ヨーロッパのリーダーシップを維持するためには、
やるべきことが沢山あるのです。
いずれ連邦国家へ向かうというコメントは非常に印象的なんですけども、
ただ一方で現在を見てみますと、
各国でEU統合に懐疑的な勢力というのはむしろ増えていると思うのですが、
これについてアタリ氏はどのように考えているのでしょうか。
各国で反EUの勢力が増えているのは確かですが、
一方で各国では反EU勢力が強まることに対する警戒感も強まっていて、
統合が後戻りすることにはならない、というのがアタリ氏の見方です。ただ各国で国境を閉ざす動きが出ていることに対しては、
強い警戒感を持っていまして、
ヨーロッパ域内で移動の自由が制限される事態になれば、
ヨーロッパ統合の根本的な理念が崩れかねない、
と警鐘を鳴らしています。さらに無極化と言われる今の国際情勢の現状についてアタリ氏は、
ローマ帝国の末期と同じ状況にあると危機感を強めています。
アメリカはもはや超大国ではなく、その代わりはいません。こうした事態となったのは、過去、ローマ帝国が終焉した時だけです。
ローマ帝国の末期ですから3世紀末ですが、
その後、戦争などで混沌とした時代がおよそ10世紀も続きました。
その間リーダーは不在。現在の状況とまるで同じで、非常に危険です。
混沌とした国際情勢の中で、各国のリーダーに求められる条件とは。
今後の民主主義の行方について、アタリ氏は次のように述べました。
世界の状況を理解することです。
他国への理解がリーダーにとって、そして互いの国にとって重要です。また、他者の成功が自己の成功の条件であるとも理解してもらいたい。
私はこれを「自己中心的な利他主義」と呼びますが、非常に重要です。
もし民主主義が今後も今日のように短期的な問題を焦点とするなら、
選挙は単なる人気投票になってしまうでしょう。それは大問題です。短期的な視野で長期的な決定ができなくなるからです。
一次的に支持率が下がろうとも、
社会制度やイデオロギーなどの長期的な問題にも取り組まなければなりません。
そして短期的な問題とのバランスが重要なのです。
今村さん、あの、実際にインタビューしてみて、
その感想といいますか、取材してみていかがでしたか。
ヨーロッパが数々の問題を乗り越えて統合を進めてきた現場に立ち会い、
その道のりを見つめてきただけに、アタリ氏の発言にはヨーロッパ統合にかける執念ともいえる強い思いを感じました。
同時にアタリ氏は、お聞きいただきましたように、
現在のヨーロッパの統合は、いまだ不完全であることを認めたうえで、
政治的な統合が進まなければユーロの将来は危ういとも述べ、
危機感と緊張感を持ち続けるべきだと強調していました。人間が世界規模で国境を越えて移動し、
相互の依存関係が一段と深まる国際社会では、
対立点にとらわれることなく、
お互いの本質を見極め、相手の利益や考え方を理解することが、
結果として自らの利益につながるというアタリ氏の言葉に、
グローバルに活動する人々にとっての、
激動の時代を生き抜くヒントがあると感じました。
ヨーロッパ総局の今村啓一総局長でした。
今朝ご紹介したジャック・アタリ氏のインタビューは、
2月27日放送のBS1スペシャルで詳しくお伝えします。
と長い書き起こしでしたが、
これで正味9分22秒です。
アタリ氏はビルダーバーグ会議の会員ですから、
お仲間のために一肌脱いでいるのか、
それとも本当に人類のことを憂慮しているのか、
もしくはユダヤ教の繁栄(アタリ氏はユダヤ教徒です)のために尽力しているのか、
今後のアタリ氏の動向に目を光らせなければ、です。
さあ、2月27日(土)22時~22時50分に、
BS1で詳しく放送します。
(番組紹介)
統合を進めるヨーロッパが、激震に見舞われている。
難民受け入れをめぐる対立。
統一通貨ユーロの問題。テロとの闘い。
ヨーロッパを代表する知性のアタリ氏がゆくえを語る!
(番組内容)
統合を理念にかかげてきたヨーロッパが、いま激震に見舞われている。
中東から押し寄せる難民の受け入れをめぐってEU内で意見が対立。
ギリシャの経済危機を発端に統一通貨ユーロの問題も浮かび上がった。
パリの同時テロ事件以来、ヨーロッパ全土に警戒態勢が敷かれている。
なぜいま、さまざまな危機が襲いかかるのか?
統合を進めてきたヨーロッパはこれからどうなるのか?
経済学者で思想家のジャック・アタリ氏が語りつくす!