ジャック・アタリ BS1(2016/02/27) けん怠感が戦争を起こす



2016年1月27日のワールドニュースで、
ジャック・アタリ氏のインタビュー内容を簡単に紹介していましたが、
それは10分にまとめた短いものでした。

今回は50分のフルバージョンだったため、
期待していたのですが、
1月27日放送分を超えた話しはほとんどありませんでした。

それでも「これは!」と思う箇所が、
ところどころにありましたので、
抜き出してみました。

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前半はEU統一は達成できるかという、
前回と同じ内容でした。
EU加盟国
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続いて移民受け入れのメリット、
とりわけロシアからの若い移民が「google」を立ち上げたこと。
このようにアメリカにとって「移民」は良かったという歴史がある。

続いて。。。

(今村啓一ヨーロッパ総局長)
年配の世代は、第二次世界大戦を経験してますから、
民主主義の重要性を理解していると思います。
一方、20代や30代の若い世代は、いま民主主義をどうとらえているのでしょうか?

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(アタリ氏)
彼らは民主主義を自己中心的になれる唯一の権利だととらえています。
それは民主主義の本当の定義ではありません。
私が懸念するのは、若い世代が無意味な世界に生き、けん怠感を募らせることです。
人間は退屈を感じたとき、そこから脱出するために、どんなことでもします。
戦争体験のない世代は、戦争は悪ではなく、楽しいとさえ考えてしまうかもしれません。
戦争とは決して、そんなものではありません。
戦争を経験した世代は知っています。
若者が戦争に走ってしまう、大きな危険だと思います。

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中盤はトルコやロシアは当面EUには参加できないという見解。

ここから後半です。

(アナウンサー)
世界が直面する課題としてアタリ氏は予測をしています。
それは超大国の覇権に変化が起こることです。
第二次世界大戦後、世界一の豊かさを誇ってきたアメリカ。
そのアメリカに衰退の兆しが訪れています。
2007年に起きたサブプライムローンの破たん、
それ以前からアタリ氏は、アメリカの経済的繁栄に転機が訪れると指摘していました。
(アタリ氏)
今回の危機ですでに始まっていますが、アメリカ支配の崩壊です。
もちろんアメリカそのものは残りますが、
唯一の存在ではなくなります。
アメリカはインフラ整備、 水 やエネルギーの確保。
そして膨大な借金を返済するために、世界から撤退するでしょう。
アメリカは内向きになってゆくのです。

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(今村啓一ヨーロッパ総局長)
超大国アメリカの覇権が一段と弱くなり、
世界が無極化しています。
今後、世界情勢はどう変化していくのでしょうか。

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(アタリ氏)
これまでヨーロッパには、世界に目を向けリーダーとなる国が常に存在していました。
イタリア、フランドル、オランダ、イギリス、アメリカ・・・
今日、日本は世界のリーダーになることには関心がありません。
中国もそうです。
この先千年以上、この状態が続くでしょう。アメリカはもはや世界の大国ではなく、
しかも、その代わりはいないという事態です。
今は、ある大国が弱体化する中、
その後を継ぐ国がないという状況です。
そうして事態は過去一度しかありません。
ローマ帝国の終えんです。3世紀末、ローマ帝国の末期には、
どの国もローマ帝国の代わりにはなれませんでした。
混沌とした時代が10世紀も続きます。
そこでは誰もがローマ人の価値観そのままでした。
宗教、言語、身なりなどです。
けれども、リーダーとなる国は現れない。
現在の状況とまるで同じです。
もはや超大国は存在しません。

でも誰もがアメリカ人のような暮らしをしています。
しかし誰もリーダーとして世界をけん引していないのです。
これは非常に危険な時期です。

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(今村啓一ヨーロッパ総局長)
超大国が存在しなくなり、無極化する世界の中で生き残るために、
いま各国のリーダーにはどのような資質が求められているのでしょうか。

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(アタリ氏)
お互いの状況を理解することがリーダーにとって重要です。
他者の成功は自己の成功の条件でもある、ということです。
私はそれを”自己中心的な利他主義”と呼んでいます。
”利他主義”が自分の利益にもつながる、
これは非常に重要な点です。
(今村啓一ヨーロッパ総局長)
無極化とも言われる国際社会の中で、日本がどのような役割を果たし、
いかに存在感を発揮すべきか、最後にアタリ氏に聞きました。

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(アタリ氏)
日本が太平洋地域における大国であることを、私たちは望んでいます。
環境問題やテクノロジーなど、
国際的な課題に自国の見解をもっと反映させてください。
日本はナノテク、バイオテクなど、
多くの分野で最先端の国ですから、
いずれにしても、日本は地域の平和にとって、
欠かせない存在です。
中国との真の平和を追求することが求められます。
私は中国と日本の関係に大きな懸念をもっています。
真の平和が必要です。
我々の例でいえば、
フランスは謝罪し、ドイツも謝罪しました。
今では両国は緊密な同盟国です。
世界平和の礎です。
日中両国も真の平和を目指すべきです。
指導者だけでなく、国民レベルでのことです。人口問題の解決も必要です。
もし日本で高齢化社会が進むなら、それは自殺行為です。
大国としての地位を維持できなくなります。
日本は人口バランスを安定させるべきです。

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と、こんな感じでした。

中でも「ドキッ」としたのは、
「けん怠感を募らせ、退屈を感じたとき、そこから脱出するために、人間はどんなこと(戦争)でもする」
の部分でした。

島田雅彦さんは、NHK「100分で名著」の「オイディプス王 第4回」で解説者として登場していまして、
「平和というのは戦争と戦争の間、なんですね」と持論を述べていました。

その平和に飽きてきたとき、
人間は倦怠感を覚え、
退屈から脱するために戦争に突き進んでしまう。

これが今まで戦争を繰り返してきた人類の歴史に繋がるのですね。
第三次世界大戦も起こるべくして起こるのでしょうね。

「倦怠感」が戦争を起こす・・・
そんな発想は、いままで私にはできませんでした。
さすが、アタリ先生です。

(以下、オイディプス王第4回からです)

(ナレーター)
(20:53~)
「作者ソポクレスの想いを語ったかのようなオイディプスの台詞があります」
オイディプス(回想)「老年や死がないのは神々だけだ。その他のすべてのものは、すべての克服者たる時がついえさせてしまう。地の力も滅び、身体の力も滅びる。同じ心が友のあいだにも、国と国とのあいだにも、不動であることはけっしてない。遅かれ早かれ、娯(たの)しみは苦しみに、そしてふたたび愛に転ずる。」
(島田雅彦氏)
結局、国を守る原理というのは何なのか、ということを考えた時に、戦争を有利に戦うというよりも、これは人と人の信頼関係とか、愛とか、いうこと。これこそが国家を守る一つの大原則なのだという。で、平和というのは戦争と戦争の間、なんですね。言うなれば戦間期というか休戦期に過ぎないわけです。で、前の戦争が終わって、ちょっとつかの間の平和の期間があって、また次の戦争が始まるんだけども、大体この平和な時代に戦争の悲惨さを忘れるんですよね。日本もアジア太平洋戦争から70年の歳月というのは、一回それが忘れられるに十分な歳月ではあったと思うんですよね。でも、ふと振り返ってみると、2000年前の人も、2500年前の人も同じ経験をしているな、ということは学べるわけですよね。現代の日本人て、まったく縁もゆかりもない話とは思いながらも、なんか共感できるところはありましたでしょ?
(伊集院光)
今のお話しで共感できるのは、人類の本性として、いつかは戦争になるんだろうけど、もっと先の方が良かったり、起こらない方が良いという行動をしたかしないか、俺、結構でかいということが、ちょっと入っている。俺の響き方としてはちょっとそう。
(島田雅彦氏)
なるほどなるほど、だから、個々の人がね、そういう自分の信義に基づいて正しい選択をするという、その責任はあるということは受け取れますよね

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